本稿は、インプレス社DOS/V Power Report
99年5月号の記事から転載しました。
DOS/V Power Reportホームページ:(http://home.impress.co.jp/magazine/dosvpr/)
▲宮下
Child-Dreamの主宰にしてプロデューサー・シナリオライター
▲秋元
Child-Dreamには音楽担当として参加しているが、CG、ムービー、Macintoshプログラミングもこなすマルチクリエイター
Child-Dream結成の経緯は?
宮下:最初から団体を作ろうというわけではなかったんです。
もともと私がゲームを作りたいと思っていたのですが、
アスキーから発売されているRPGツクールという制作ツールがあったので、
それを使えば個人レベルでも何とかできるかな、
ということで一人で作り始めました。
最初はグラフィックやサウンドを素材集で補っていたのですが、
それでは足りないので、
手伝ってくれる人を探してサークルの仲間に声をかけたりしているうちに、
どんどん増えていって……。という感じですね。
メンバーの入り方は二通りです。
インターネット上で作品を見付けて
「これを使いたいな」というのが縁でメンバーになっていただくのと、
私の近くにいる人間で「こいつこんなことができたんだ(笑)」というのと。
みんな今では不可欠な存在になっているんですけど、
最初は本当に一人で作り始めたという形でしたね。
最新作「人形の傷跡」開発の苦労話などありましたら教えてください。
宮下:いろいろありますよ(笑)。
まず現代物のアドベンチャーが難しいというのがあります。
一つの推理小説を書くだけの力がいりますから。
ファンタジーRPGの自由度に比べると、
現代をベースにした話の難しさというのもありますね。
それとシステム面で思ったようなものが組めなくて、
理想とのギャップが大きかったです。
まだ、今の状態でゲームとして最良の出来とは思わないんですけど、
ようやくなんとか形になったというところです。
将来的にコンシューマ化することを目標にしているのですが、
それを考えられるだけのものになってきたと思っています。
「RPG制作集団」が今回アドベンチャーを作られたのは
どういった理由でしょうか。
宮下:芸風を広げたい、といったところですかねえ(笑)。
いろいろ作りたいと思っていますので。
RPG制作集団という肩書きは、単にこれまでRPGを作っていたから、
ということで深い意味はありません。
私としてもRPGも好きだしアドベンチャーも好きだし、
あとシミュレーションですとか、いろいろなジャンルに興味がありますから、
どれも積極的にやっていきたいです。
そういう意味では今までRPG2本作ってきたので今度はアドベンチャー、
またファンタジーだったのに対して現代物というふうに、
コンセプトをいろいろ変えて作っています。
あくまで、修行時代、試行錯誤している段階だと思っていますので。
だからよい評価をされたから、
それと同じようなものを同じ主人公設定で作って、
なんてことをやりたいとは全然思わなくて、
むしろいろいろなことに挑戦していきたいと思っています。
音楽に力を入れていらっしゃるようですが。
宮下:そうですね。僕だけじゃなくて、メンバー全員音楽経験者ですから。
音楽に関しては各々のこだわりがありますね。
それでいろいろなところに声をかけているわけですね。
宮下:やはりよいものを使いたいと思いますから。
たとえば「Lost Memory」のテーマ曲、
元曲は「One Day」というのですが、あれがまさに典型的で、
初めは素材集とかを探していたのですが、
なかなかよいものがなくて、
インターネット上をいろいろ探した結果、あの曲かな、と思いまして……。
そこでAIさん(「One Day」の作曲者)と出会ったわけです。
秋元さんとの出会いもインターネット上なんですよ。
秋元さんはどういった経緯でChild-Dreamのほうに?
秋元:4,5年前にMacintoshを買いまして、
音楽が目的で買ったわけではなかったのですが、
たまたまフリーのMIDIシーケンスソフトがあって、 作曲を始めました。
挙げ句の果てにホームページまで作ってしまったのですが、
それがきっかけでここのメンバーと知り合えたわけです。
昔は1週間に1曲くらい作っていたのですが、
ここに加わってからは1日に2,3曲くらい(笑)。
ゲームの画面を見ていると
そのシーンに適した曲が浮かんでくるので…。
曲作りのポイントは。
秋元:いろいろな曲を聞くことですね。
なんでもいいですから。
気に入った曲があればそれを徹底的に追及するのでもいいですし。
次回作について教えてください。
宮下:現実と連動する形のアドベンチャーゲームというのを考えています。
「現実交錯型アドベンチャー」「リアルミッション型アドベンチャー」
とでも名付けようかと思っていまして、
基本的なシステムは普通のアドベンチャーなのですが、
その中でたとえば主人公が誰かにメールを送りたいが、
マシンが壊れていて送れないと。
「あいつにメールさえ出せれば」と
メールアドレスを眺めていたりするわけです。
そこでプレイヤーはゲーム中では行き詰まっちゃうんだけど、
どうするかと言うと、自分で実際にそのアドレスにメールを書くわけです。
そうしたら、当然自動返答なんですけど、
その人からのメールが返ってくる。
それを見て今度はゲーム中も進むことができるという仕組です。
Webも同様に、ゲーム中に出てきたサイトが実在するわけです。
これらの仕掛けの中で一番のポイントはメールマガジンとの連動でして、
「Gamers View」というメールマガジンがあるのですが、
その編集長が新たにゲーム関連のメールマガジンを
かなり大きな規模で立ち上げるんです。
それとの連係の企画という形で、たとえば主人公が記者と話していて、
プレイヤーはその内容が分からないのですが、
そのメールマガジンを購読して読むと、
ゲーム中に出ていた記者が実在していて、
編集後記に暗号があったりとかね。
そういった考えがあるので、今回はシステムから作ってみることにしました。
かなりコストをかけることになるのですが、
思い切ってやってみようかな、ということで。
基本的にはインターネットとの連動ですね。
宮下:そうですね。
ただ実際にプレイヤー自身が事件に巻き込まれていくような
感覚を出そうとも思っています。
これはシナリオ上の話で、言ってしまうと
ゲームの内容に踏み込むことになるので説明が難しいのですが(笑)。
今はまだ構想中ですが、
どこまでそういう雰囲気を出せるかが勝負になってくると思います。
そのほかのポイントなどは。
宮下:「人形の傷跡」はホラーっぽいものになってしまったので、
それよりはもっと、推理とか、人間関係とか、
そういったものを色濃く出していきたいなと思っております。
推理という要素をシステム上で表現したいというのが一つと、
あとはキャラクター性をもっと出していきたいですね。
コンシューマ化という話がありましたが具体的には……。
宮下:Child-Dreamの活動目標として、
コンシューマ機で作品を出したいというのがあります。
要はプロとしてやっていくということです。
RPGというのはどうしても
オンラインソフトには向かないところがあるんですよね。
CG、サウンド、ムービーなどをふんだんに使ってこそ、
という部分がありますから。
そういった意味でコンシューマで作りたい、というのがまず第一ですね。
また、多くの人にプレイしてもらいたい、という理由もあります。
ただそのためにどういったアプローチを取るかが難しいところでして、
たとえば映画で言えば監督にいきなりなりたい
と言っているようなものですからね(笑)。
そこでまずオンラインソフトという形で、
ネットワーク上の実力、知名度、ユーザーを蓄えて、
その実績をもとに既存のゲーム会社への売り込みという形で
コンシューマ化を実現したいな、と思っています。
まだ本格的ではないのですが、
ゲーム業界の人たちとお会いしたりとかも、徐々に始めていまして、
また夏に完成する次回作が出れば、
インターネット上でおもしろいことをしている制作集団として、
メジャーな存在になっていけるのではないかな、と思っております。
ユーザーに対してアピールしたい点などありましたらお願いします。
秋元:次回作も泣かせますので、楽しみに待っててください(笑)。
宮下:これが全力だと思ってもらっては困る、
みたいなところはあるのですが(笑)、
やはりオンラインソフトということで、
制約があって作っているのが大きいですから。
今後まだ、同じ素材でもっとよいものが出せる可能性はあります。
そういった意味では、われわれにとっては
今出しているソフトはプロトタイプ、
絵描きで言えばスケッチみたいなものです。
色が入るのはこれからですね。
ただ、スケッチだからといって本気を出していなかったり、
おもしろくなかったり、というわけではありません。
スケッチだけれども、鉛筆でできる限りのことはしています。
これからオンラインソフト(ゲーム)を作ろうという人に一言お願いします。
宮下:これは私が勝手に付けた区別なんですが、
クリエイターとアーティストという区別があって、
アーティストが作るものはたとえ他人が評価しなくても
アートとして成り立つ可能性があるのですが、
クリエイターというのはやはり他人が評価してなんぼ、
というものだと思うんですよ。
本人がすごくよいと思っていても、
誰一人としてそれを評価してくれなかったら、
それはやっぱりダメだと思うわけです。
だから作るときもユーザーがいて、
評価されてなんぼという意識で作る必要があると思います。
ただ一方で、「他人のためにやる」という発想に行ってしまうと
おもしろくないので、そこが難しいのですが(笑)。
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